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2024/08/28 12:00



続いていたい、というのが「島の装い。」を始めたときの願いのひとつ。

ぼくがいつもしている「取材」で得られる情報は、そのつくり手にとってごくわずかな断面でしかなく、ぼくの人生とのささやかな接点でしかない。だからこそ価値があると思う一方で、つくり手のその後の人生や、山や谷を少しでも共有し助けあえるような、そんな関係性がつくれないかと、いつも思っていた。




イベントでならきっとそれが変えられる。駆け出しで積極的に出店したいのであればスペースや出店日数を増やしてみよう。次の機会は出産や子育てでお休み、その次には子連れで参加して。人気が出て販売のステージが変化してきたら卒業していくつくり手もいるだろう。そんなふうにして、つくり手としての道のりの現在地や、ひとりの人としてのライフステージは変わっていく。それぞれの状況になるべく寄り添えるような、そういう懐の深さを持ったイベントでありたい。続いていくことで接点を増やしていければ、やがて線での関係性がつくれるのではないか。



ぜひ出店してほしいと声をかけ続けて、ついに叶わなかった人がいる。取材に伺ったのはもう7年も前のこと。広い空と、直前に上がった雨で濡らされきらきらと水滴が輝く緑に囲まれたコンクリート造りの平屋。建物自体はとても古くてぼろぼろだったけれど、なんとも言えない美しさがそこにはあった。植物や土を使っていろいろなワークショップをしていた彼女は、聡明で凛としていたけれど、カメラを向けるととても照れくさそうにした。




結局、タイミングが合わずに出店は実現せず、お会いできたのは数回でしかないのだけれど、取材の日のことはいまでも鮮明に覚えている。彼女の作り出す世界や生き方は印象的で、ぼくの心にくっきりと何かを残した。それが何かを言葉にするのはとても難しいけれど、島の装い。を始めていくことの端緒のひとつに、きっとなっている。こちら側の一方的な思いだけれど、そういう接点が彼女との間にはあったのだ、と、ここに記しておきたくなった。わずかな接点かもしれないけれど、たしかにここにあるものとして。

集えるということは奇跡のようなことだな、と改めて思う。いろんなことを背負いながら、すこしでも多くの奇跡を集められるように、島の装い。は続いていたい、と願っている。



text : セソコ